生え際の両サイド、いわゆる「M字部分」の後退が気になり始めると、多くの人がやってしまいがちなのが、残っている前髪を長く伸ばして、薄くなった部分を無理やり隠そうとすることです。しかし、この「隠す」という発想こそが、M字はげをかえって悪目立ちさせてしまう最大の原因なのです。汗や風で前髪が割れた瞬間に、隠していた部分が露わになり、そのコントラストがM字部分をより一層強調してしまう。この悲劇的な現象は「バーコードヘア」とも揶揄され、清潔感を損ない、実年齢よりも老けた印象を与えてしまいます。M字はげを魅力的にカバーし、スタイリッシュに見せるための髪型の基本ルールは、隠すのではなく「活かす」、そして「馴染ませる」ことにあります。まず、最も重要なルールが「サイドとトップの長さにメリハリをつける」ことです。M字部分が気になる人の多くは、サイドや後頭部の髪はまだ十分に元気な場合が多いです。この元気なサイドの髪を短く刈り込み、逆にトップの髪には長さを残してボリュームを出す。こうすることで、視線が自然とトップに集まり、サイドのM字部分が目立ちにくくなります。いわゆるツーブロックやフェードカットが、このルールを巧みに利用した髪型です。次に、「前髪は短く、上げる」のが基本です。長く重たい前髪は、M字部分との境界線をくっきりとさせてしまいます。思い切って前髪を短くし、ワックスなどで立ち上げて額を出すことで、M字のラインが全体のヘアスタイルに自然に溶け込み、潔く爽やかな印象を与えます。また、パーマをかけてトップに動きやボリュームを出すのも非常に効果的です。髪全体にランダムな動きが生まれることで、生え際のラインがぼやけ、M字部分への視線が分散されます。隠すというネガティブな発想から、活かす、馴染ませるというポジティブな発想へ。この意識の転換こそが、M字はげという悩みを、洗練された大人の魅力へと昇華させるための、最初の、そして最も重要な一歩となるのです。