「両親ともに髪がフサフサだから、自分はハゲる心配はないだろう」と考えている方もいるかもしれません。確かに、親が薄毛でない場合、遺伝的なリスクは低いように感じられます。しかし、それでも油断は禁物です。薄毛、特にAGA(男性型脱毛症)の遺伝は、単純な優性・劣性遺伝ではなく、複数の遺伝子が関与する多因子遺伝であり、その発現の仕方は複雑です。例えば、両親は薄毛でなくても、祖父母やさらに前の世代に薄毛の人がいた場合、その遺伝子が隔世遺伝のような形で現れる可能性もゼロではありません。また、前述の通り、AGAに関わる遺伝子の中にはX染色体上に存在するものが含まれており、これは母親から受け継がれます。母親自身は薄毛でなくても、その父親(母方の祖父)が薄毛であった場合、その遺伝的素因が息子に受け継がれることは十分にあり得ます。さらに重要なのは、遺伝はあくまで薄毛のリスク因子の一つであり、全てではないという点です。たとえ遺伝的な素因が少なかったとしても、生活習慣の乱れ(不規則な食事、睡眠不足、喫煙など)、過度なストレス、不適切なヘアケア、特定の病気や薬の影響など、後天的な要因によって薄毛が進行することは十分に考えられます。特に現代社会は、ストレスが多く、食生活も乱れがちです。これらの環境要因が、潜在的な薄毛のリスクを顕在化させる引き金となることもあります。したがって、親が薄毛でないからといって、自分は絶対に大丈夫だと過信するのは危険です。日頃からバランスの取れた食事を心がけ、十分な睡眠をとり、適度な運動をし、ストレスを溜めないようにするなど、健康的な生活習慣を維持することが、遺伝的背景に関わらず、薄毛を予防するためには非常に大切です。そして、もし薄毛の兆候を感じ始めたら、早めに専門医に相談することをお勧めします。
5月6